更新日:2026/2/9

相続放棄といえば家庭裁判所への手続きだったはず?....なのですが、「遺産分割協議での相続放棄」という言葉を聞くことがあります。
いったい「遺産分割協議での相続放棄」とはなんなのか?、家庭裁判所への相続放棄となにが違うのか?、といった疑問について解説してみようと思います。

正式な相続放棄とは....

遺産分割協議での相続放棄とは?

お客様 

「相続は放棄したんですよ」


私   

「あっ、じゃあ家庭裁判所で手続きされたんですね」


お客様 

「いや、家庭裁判所には行ってないです」

前述のとおり、「相続放棄」といえば、「家庭裁判所への相続放棄」のことを指します。
ところが、このお客様は「家庭裁判所への相続放棄」はされておらず、遺産分割協議での相続放棄をされていることになります。

では、「遺産分割協議での相続放棄」とはなんでしょうか?
遺産の分け方については、相続人の間で話し合い(遺産分割協議)を行い、どう分けるかを自由に決めることができます。
この話し合い(遺産分割協議)の中で、「私は遺産はいらないので、みんなで分けてね」ということで自ら遺産の受取りを辞退したり、遺産は家業を継いだ長男がすべて相続するような取り決め(少し時代遅れかもしれませんが....(汗))をしたりして、遺産を受取らない相続人がいる場合があります。
このことを「相続を放棄したんですよ」と表現するケースがあり、「遺産分割協議での相続放棄」と呼ばれています。(話し合いの結果を遺産分割協議書という文書にまとめることから「遺産分割協議書での相続放棄」と呼ばれることもあります)
「遺産分割協議での相続放棄」は正式な法律用語ではないですが(正式な相続放棄は「家庭裁判所への相続放棄」だけです)、呼び方はともかく、話し合い(遺産分割協議)で遺産の受取りをしないというケースは珍しいことではないです。

「家庭裁判所への相続放棄」と「遺産分割協議での相続放棄」の違い

冒頭に書いたとおり、「家庭裁判所への相続放棄」をすると、最初から相続人ではなかったことになり、亡くなった方の遺産(負の遺産含む)を引き継ぐ(相続する)こともなくなります。
相続手続きにも一切関与しません。

これに対して「遺産分割協議での相続放棄」は、相続人の間の話し合い(遺産分割協議)で遺産の受取りをしないということを決めただけです。
正式な相続放棄の手続きは踏んでいないため、相続人という地位は失っておらず、外からみればその人は変わらず「相続人」という扱いを受けます。

例えば、亡くなった方に負の遺産(借金など)があった場合は、債権者(貸主)は「遺産分割協議での相続放棄」をした人に対しても返済を請求することができます。
また、すべての相続人の同意(署名・押印など)が必要な手続き(例えば、亡くなった方の銀行預金の払出しなど)では、「遺産分割協議での相続放棄」をした人も手続きに参加する必要があります。

単に遺産を受取らないにしても、最初から相続人ではなかったことになる「家庭裁判所への相続放棄」と、相続人という地位は失わない「遺産分割協議での相続放棄」の違いを理解して、どちらの方法が適しているのかを考えて、より適切な方法を選択していただければと思います。